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山梨文化会館

山梨文化会館

山梨県甲府方面に出掛けた際、「山梨文化会館」へ立ち寄ってきました。

1966年に完成した丹下健三の代表作品の一つで、「メタボリズム」(生物学用語の「新陳代謝」を語源とした建築運動)の象徴的な建築と言えます。
16本の円柱と梁とで支えられた存在感のある外観が、やはり特徴。
半世紀を経た現在も、甲府駅の北側景観に圧倒的なインパクトを与え続けている建築です。
DOCOMOMO JAPAN選定 日本におけるモダン・ムーブメントの建築100選にも登録されています。

 

山梨文化会館

メタボリズムの思想通り、増築工事が1974年と2005年に行われ、延床面積が合計で約3,800㎡も増えているているところが凄いです。
また改修工事は1990年、1997年、2000年、2013年に行われ、内外装の改修やエスカレーター新設などがあったようです。

 

山梨文化会館耐震改修

現在、丹下建築作品では初となる免震耐震改修工事が行われています。

山梨文化会館耐震改修

山梨文化会館に採用された改修構法は、建物地下2階の柱脚部に免震装置を設置して、外周部分の擁壁と縁を切る中間階免震レトロフィット構法。
工事の仮囲いも現状、建物の足元のみでスッキリとした印象でした。

 

山梨文化会館

16本の大きなコア柱と呼ばれる直径約5mの円筒柱1本当たりの支持荷重はおよそ24,000kN(2,400ton)とのこと。
そのコア内部は階段、EV、トイレ、倉庫などとして利用されていますが、免震装置の設置工事に際しては柱脚にコンクリートを充填して免震基礎を構築し、油圧ジャッキ等により荷重の受け替えを行いながら柱を切断。その後免震装置を設置してジャッキダウンし、柱の免震化工事が完了、と建築ニュース等で発表されています。

 

山梨文化会館 山梨文化会館

間近に見る円筒柱コアは大迫力です!

 

山梨文化会館

コア円筒柱と梁の取り合い部。

 

山梨文化会館

梁下にシャッターを納める都合から? 独特なディテール。

建築の外部を一回りするだけでも、各所のデザインに設計者の強い思想と言いますか、執念のようなものが滲み出ていて・・圧倒されます。

 

山梨文化会館 山梨文化会館 山梨文化会館 山梨文化会館 山梨文化会館

施設南西角の柱には、「D&DEPARTMENT YAMANASHI」のサインがあり、ガラスのカーテンウォールとなっている出入口から入ってみます。

 

山梨文化会館 山梨文化会館 D&DEPARTMENT

エントランス吹抜け。
エスカレーターを上った2Fがお店です。

 

山梨文化会館

円筒柱、かなり太いです・・

 

山梨文化会館 山梨文化会館 D&DEPARTMENT

梁上部に砂利敷き。

 

山梨文化会館 D&DEPARTMENT

スタッフの方に写真確認をお聞きしてから、店内スナップも少々。
ショップカウンターは2つの円柱コアの中央にちょうどおさまって、うまく配置されていました。

 

山梨文化会館 D&DEPARTMENT

コア内に男女トイレ。それなりにタイトな配置でした。
できれば、円筒柱内部の階段室を見学してみたかったのですが・・

 

山梨文化会館 D&DEPARTMENT

トイレ脇から見る外部階段。

 

山梨文化会館 D&DEPARTMENT 山梨文化会館 D&DEPARTMENT

窓際のカフェスペースからは、城郭ゾーンを望むことができます。穏やかな場所でした。

 

甲州夢小路

こちらは甲府駅の北側、JRと山梨文化会館との間に展開している「甲州夢小路」エリア。

 

免震レトロフィット技術により、丹下建築がその時代の求める機能性とデザイン性を維持した建築として残り続けることとなるようです。
半世紀後の改修工事が、当初の設計者・施工者によるということも素晴らしいです。
地域の建築文化に留まらず、日本の近現代建築にとって大変明るい話題だと思いました。

ちなみに1966年に竣工した建築を調べますと、
パレスサイドビル/日建設計(林昌二) 東京都
海のギャラリー/林雅子 高知県
アートプラザ(旧大分県立図書館)/磯崎新 大分県
白の家/篠原一男 東京都
ソニービル/芦原義信 東京都
塔の家/東孝光 東京都
国立京都国際会館/大谷幸男 京都府
川合健二邸/川合健二 愛知県
都城市民会館/菊竹清訓 宮崎県
目黒区役所(旧千代田生命本社ビル)/村野藤吾 東京都
などが挙げられ、
これほど特別な建築作品が同一年に多く生み出されていた事実に驚いてしまいます。

既に残すことが出来なくなってしまった建築もありますが、是非とも山梨文化会館のような機能+デザインの保全が全国的に広まってほしいものです。

 

 

 

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2016-09-11 | Posted in diary, blog |