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無塗装で6年経過したレッドシダー

週末は、以前弊社で設計しました木造平屋建ての「犬山の住宅」(2016年竣工)にお招きいただき、家族で伺いました。
早いもので建物の竣工から5年と9ヶ月ほど経過しています。
クライアントご家族の暮らし振り、建築に問題がないかなどお聞きしながら楽しいひと時を過ごしてきました。

写真は、外壁の施工時期から数えて約6年経過したレッドシダー(t=18mm/チャネルオリジナル)と板金の屋根です。

1年検査、その後2年、3年と特に不具合もありませんが、外壁の縦羽目板(樹種:レッドシダー)はあえて無塗装のままとしており、経年変化については実際に見て確認しておきたいポイントの1つでした。
現地を訪れますと、外壁は、以前よりも落ち着きのあるシルバーグレーに表情を変え、とても魅力的に見えました。建築全体に風格が出たようにも感じます。
設計では、木部の外壁がシルバーグレーに退色することを見越して、屋根のガルバリウム鋼板のカラーは同系色となるシルバーをセレクトしました。また外壁(妻壁)と屋根取合い部も跳ね出しを小さく留め、一般的な破風板おさまりではなく板金施工のシャープな表現としましたが、およそ意図したイメージになってきました。

ちなみに外装は自然素材である天然木ですが、レッドシダーは建材メーカーさんが国内で扱いはじめて半世紀近い実績があり、それだけ時間経過しても十分に健全な外装の事例があるとのことです。

また住宅メーカーさんの外壁に多く採用されるサイディングパネルでは目地のコーキング(止水のため)があり将来打替え等も必要ですが、この羽目板張りは実(さね)付きのジョイントで、外壁下地に通気層を設けてその内側を止水ラインとしているため、木部でそうした手間も不要です。

こちらの写真は、施工した直後の外壁の様子。

木部には新築時に保護塗装をするのが一般的で、またその後も状況を見て定期的なメンテナンス(再塗装)は必要となります。
しかしこの設計では、保護塗装をしないまま木の色が抜けるところまで一度退色が進むとその後の経年変化は比較的少ないという見通しで、無塗装としています。また保護塗装を塗ってからでも長期に放置すれば一定の退色は進みますが、その場合の退色はムラが出易く、無塗装の退色の方がより綺麗なシルバーグレーになるというのが狙いであり、さらにイニシャル(新築時の塗装)、ランニング(定期の再塗装)コストの軽減にもなります。

良い雰囲気をつくり出していた外装の確認に続き、室内についても拝見し、お話をお聞きしました。


内部に一歩入ると、エントランスの土間からリビング・ダイニングまで連続する空間が広がります。

数ヶ月前に新築でお引き渡しをしたかのような、いやそれ以上に洗練されたご家族の自然体の暮らしがそこにあり、「本当に6年近くも経っている住宅?」と言いたくなるほど。
私たちは思わず立ち尽くしてしまいました。

設計時に、平屋でこんな暮らしが出来たら・・とクライアントと一緒に考えたことが見事に実現しています。
ご家族の建築・設計への理解と愛情を感じ、涙腺が緩むほど感激しました。

生活動線に沿った、長い壁面収納。写真左下の矢印は子供室への案内板。
キッチン背面の自立壁は写真ギャラリーに。

ピアノを習いはじめて1年ほどのお子さん(小学生)のお部屋。「ここは特に程よく風が抜け、窓からは田園風景も見渡せ、すごーく快適な部屋です!」とのこと。

クライアントより「住宅全体で空間の大きさや機能面で、多くも少なくもなく、ちょうど良いと感じている」とお聞かせいただき・・
住まい手として上級者と言うしかありません!

リビングのH鋼柱には、100mm幅にぴったりの可愛らしいハト時計。

お昼もご一緒させていただき、また午後は外で子供たちと庭や周囲の田んぼで遊び(娘は初めての凧揚げを経験!)、そして再度室内でお茶をいただきながらゆったりとした時間を過ごすことができました。

建築を見れば、何年経っても設計をしていた時の建築とクライアントへの想い、あるいは当時工事に関わった多くの方々の様々な配慮が鮮明に蘇ってきます。そうした多くの関係者の前向きなエネルギーが注がれた建築に、クライアントがさらなる愛情を注いで建築を育んでくれる状況がはっきりと伝わってくる住まいでした。それは言葉にしてご説明いただかなくても、建築は日常までを雄弁に語り、私たちにメッセージとして届けてくれます。設計者がクライアントから受け取るギフトとして、これ以上のものはない?とさえ感じる幸せな経験をさせていただきました。今後、設計活動を続ける上で心の支えにしたいと素直に感じました。

長時間お邪魔させていただき本当にありがとうございました。
これからも建築の経過、ライフスタイルの変化も見守っていきたいと思います。

blog category:犬山の住宅
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2021-11-29 | Posted in diary, blog |