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日吉大社

少し前になりますが、関西へ調査で出かけました途中、滋賀県の大津市にあります日吉大社へ立ち寄らせていただきました。

日吉大社は、国宝の東本宮本殿(1595年、日吉造:ひえづくり)などが建築的には知られるところです。
夕方になってしまいましたが、はじめて参詣させていただき、厳かな空気感を味わうことができました。
境内は広く、複数の社殿のどこを廻っても見応えがありますが、私が個人的に興味を抱きました部分を少し紹介させていただきます。

案内マップの中央やや左に記載のあります「白山宮」について補足してみます。

正式名称:日吉大社摂社白山姫神社本殿(重要文化財)
三間社流造、檜皮葺の建物で、前方の一間通しの庇が前室 と解説があります。

とにかく、平入り屋根の伸びが圧倒的な存在で、特に建物の妻面(建物両脇にあたる面)の迫り出しは何とも言えない迫力があります。軒下は明らかに外部ですが建物に取り込まれた空間領域のようです。

また、この社殿の東側には、小さなお社(末社だと思われます)が並んで配置されています。
段々とミニチュア化されたような建築のリズム・・神聖なものとして祀られているのでしょうが、可愛らしくもあり優しい気持ちにもなります。

神社建築では、屋根が大変に立派であっても、室内にあたる部分はおよそ小規模でかつ、その内部空間を見せることなく、神体を祀る専用建物になっています。
それに対し寺院建築の仏堂は、礼拝の空間を室内に備え、本尊が見えるかたちが多いので、体感できる内部空間があります。そうした点で比較しますと、神社建築は寺院建築より内部空間が少ない状況です。
ただし、神社建築は建築群が構成する外部空間に多様な魅力があり(寺院にも同様にありますが)、神社の境内には寺院のそれよりも、より複雑で変化に富んでいるものが多いと言えます。
※詳しくは、書籍「日本の建築空間」解説(建築史家/後藤治)をご参照ください

そのように境内を見ますと、建物配置やアプローチとなる階段、石垣は、その場所にしかない、固有の地形に沿う軸線などの繊細な調整作業が意識され、特別な味わいがあるように感じます。現代ではランドスケープデザインという言葉が近いのかもしれません。
ただ境内全体としては、方位とそこにある自然(水脈や植生、地盤高低差など)への敬意が感じられ、恣意的な造形という部分が一定の形式の中で抑制されていながらも、そこに関係した人々の意思とエネルギーは溢れており、素直に感銘を受けます。
さらに神社建築では、建物配置上、本殿が少ししか見えない形式とする事例(伊勢神宮ほか)もあります。現代の建築デザインに求められているものとは背景が異なる、崇高さを表現しているのだと思います。
こうした神社建築に漂う気配のようなものが、私は好きなのかもしれません。

blog category:建築視察
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2021-03-26 | Posted in diary, blog |