diary, blog
コンクリート打放し(脱型)
「新城の住宅」の現場報告の続きです。
コンクリートの打設を終え、一定の養生期間を経ていよいよ型枠を外すタイミングとなりました。ちょうどその作業の日に現場確認することができました。
床スラブや梁下のサポート(支保工)は、コンクリートを打設してから4週強度の後に外すのでしばらく先になりますが、壁の型枠についてはそれよりも先行して外すことができます(壁型枠の最小存置期間は平均気温5℃以上なので5日または圧縮強度5N/㎟以上)。
型枠の取外しを「脱型」(だっけい)といいますが、壁の脱型時は、期待しつつもうまく打設できていたかどうか、工事の関係者はドキドキする場面です。
現場を訪れたこの日に確認できた範囲では、まずは大きな問題箇所は無さそうでした。
この時期はコンクリートに水分が多く残っているため、見た目もやや黒光りする石のようなテクスチャです。少し周囲の景色が映り込んだりもします。徐々に乾燥し、やがて白っぽいコンクリート色になりますので、この時期にしか見られないコンクリートの迫力を味わえるタイミングとも言えます。
型枠は、打放し用の塗装型枠 900×1800mmのサブロク板(3尺×6尺サイズからそう呼ばれる)を縦長に配置しています。デザイン上の理由から横長に配置する設計者もいますが、これは好みにもよります。弊社では、土木工事などでも多く用いられ、大工さんも仕事がしやすいスタンダードな縦使いを採用。普通っぽいとも言えますが、なんとなくトレンドに左右されない、硬派な印象でもある気がしてそうしています。安定した大人っぽさともいえそうな。
また脱型のあとに見える丸穴は、コンクリート圧力を受けても型枠が開いてしまわないよう固定するセパレーター金具の端部のパーツです。円錐台の形でプラスチック製のコーンは、通称「Pコン」と呼ばれるものです。セパレーター端部の穴でもあるので「セパ穴」という人もいます。壁面の意匠上の検討から、弊社では原則450mmピッチとなるようPコン位置の割付指定を行なっています。
脱型後、ジャンカと呼ばれる不良箇所も見当たらず、コンクリート全般の仕上がり状況はまずまず良好で、角もビシッと出ており安堵しました。まずは現場で一緒に頑張ったみなさんに感謝したいと思います。
このままコンクリート補修も無しですと、本来のコンクリート打放し仕上げといえます。ただそのような例は一般的には少数派になりつつあるようです。コンクリート仕上げ面に、手直し・お化粧を全面的に行う補修仕上げが多いのも残念ながら昨今の実情といえます(打放しの施工がうまくいかなかった場合の補修技術が向上したため、と解釈すべきかもしれませんが)。
ちなみにこの写真は、脱型後「Pコン」を外して穴埋めまで行ったものです。期間としては脱型直後から1週間ほどの差ですが、コンクリートの色も明るく変わってきます。
しかし表面に光沢感を出しているこの極めて薄い皮膜については、その後も雨が当たらない内壁で何も手を加えなければ、保護コーティング加工なしでもほぼ変わらず持続すると思います。型枠の小口面付近やPコンまわり、打設後の養生期間の水分の残り方などでこの光沢が生まれるところ、そうならないところの差はどうやら生じるようです。型枠の塗装面のクオリティや面精度の問題だと思われがちですが、なかなかそうとも言えず、とても繊細なコンクリートの養生状態、水分環境の差のようです。
コンクリート工事で現場の対応をする時には、前職(第一工房)で学んだ現場経験がやはり何かと頼りになっています。
ちなみに「コンクリートの打放し」といえば、大阪芸術大学をはじめとする一連の作品で知られた第一工房でしたが、代表の高橋てい一(てい:青へんに光)さんのところへお若い頃の建築家・安藤忠雄さんもよく現場見学にいらして高橋さんからアドバイスを受けていたそうです。
ふと設計実務を知らなかった学生時代や、社会人になって間も無い頃を振り返りますと、
・設計事務所の仕事は、しっかりと図面を書くこと。
・現場で高い品質の建物をつくるのは施工者(建設会社・工務店)の頑張りによるもの。
と漠然と思っていました。しかし第一工房時代の実務経験の中でそれだけでは十分ではないことが徐々にわかってきました。BLOGでそのあたりの違いを示すのはなかない難しい気もするのですが、少しお伝えしてみます。
まず設計者は、ものづくりの現場を知らずには緻密な設計はなかなかできないということ。また施工者は、主に積算上の根拠となる実施設計図面だけで設計上の細かな意図を十分に読み取ることが難しいということ。そのため設計図書以上の内容について、現場レベルでの検討を重ねる必要があるのですが、現場監督さんから実際のつくり手である職人さんにどう伝えたらスムーズに設計者の意図や熱意を理解してもらえるか、FACE TO FACEのコミュニケーションがとても大切だということ。設計者が現場の監理に主体的に関わっていかないと良い建築は生まれない、その重要性について、自分が若い時にはほとんど理解できていなかったように思います。
鉄骨階段も無事に搬入設置され、次は木造部分の工事に移行していきます。
一歩一歩、現場の皆さんとその時々のベストを尽くして頑張っています。