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ジャコメッティ展

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国立新美術館で2017年9月4日まで開催されていました
「ジャコメッティ展」へ行ってきました。

20世紀を代表する彫刻家、没後半世紀を経た大回顧展。
日本で開催されるジャコメッティ展としては11年ぶりの個展であり、初期から晩年まで、彫刻約50点、絵画約5点、素描と版画約80点が出品されるとのこと。
以前の告知で、これは見たい!と思い、自分としては珍しく前売りチケットを購入していました。

ジャコメッティの彫刻は時代ごとに変化しましたが、本展覧会では戦前・戦後あらゆる時代の代表作が一堂に会します。
実際に作品を拝見し、わずか数センチの小さな人物像や複数の人物を組み合わせた群像、細長い人物像までその作家の変遷を初めてたどることが出来ました。

ちなみに、今回の展覧会で特に楽しめたのは、音声ガイドの山田五郎さんスペシャルトークです。
ジャコメッティは、どうしてこのような特異な表現になっていった?
実存主義ってどういうこと?
などなど、わかりやすい例えを交えながらの軽快なトークが秀逸でした。

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最後の展示空間のみ、撮影可能となっていました(↑写真)。

展示室に独特な空気感をもたらす、比較的大きな彫刻作品。
静止しているのですが、空間全体に何か変化を与えているようです。
どこにその力が蓄えられているのか・・

ジャコメッティは、見ることと造ることのあいだの葛藤の先に、虚飾を取り去った人間の本質に迫ろうとしました。その結果、人物の彫刻としては、どんどん細く長くなっていったようです。

しかし足元だけは、多くの時代・他の作品でも、大きく力強く地面をとらえていました。
こうでなければならない確信があったのでしょうが、なぜこうだったのか・・

建築設計でも、足元のつくり(デザインの仕方)次第で、建物の存在感、在り方そのものが良くも悪くも変質します。

重要なヒントが隠されているのでは?と
ちょっと足元の写真を撮ってみました(ただ撮っただけですが・・)。

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本展覧会で、彫刻やドローイングで繰り返し登場する人物作品「ディエゴ」・・
モデルは、ジャコメッティの弟「ディエゴ」さんだと知りました。
個人的には何だか彼のことが気になりました。

ディエゴは、造形作家(主に動物彫刻をつくられた?)として、兄ジャコッメッティも認めるほどのセンスを持っていたそうです。
ジャコメッティは、モデルに長時間動かないことを求めるため、忍耐強くモデルを続けられる人は限られていたそうです。ディエゴはそんな兄の求めに耐えるモデルを務め、自身の創作よりも兄のサポートにエネルギーを注いだようです。
何だか穏やかで優しそうな人柄のイメージ・・どんな方だったのかなぁ。

兄の没後、依頼があって製作したディエゴの家具デザインへの評価が高まるなど、兄との比較では控え目だったのかも知れませんが、確かな才能がおありだったようです。
展覧会全体では、どの時代のアートワークも、実物の存在感は圧倒的でした。
来場前には知らなかった様々な作家のエピソードにも触れ、作品の捉え方も勉強になりました。

 

 

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少し話はそれますが
国立新美術館(ホワイエ空間)の窓際には、休憩用のチェアが並んでいます。

セブンチェア、スワンチェアをはじめ歴史に残る、名作椅子を次々と輩出してきたデンマークを代表する家具メーカー Fritz Hansen(フリッツ・ハンセン)社のアイテムです。

この椅子のデザインは、同社で日本人として初のデザイナーとして抜擢された、紺野弘通さんによるもので、「RIN(リン)」と命名されています。

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日本語の「凛=RIN」が名前の由来の通り、 洗礼された力強さと曲線の美しい佇まいです。
何度見ても、非常に高いレベルのプロダクトデザインに感服します。

ジャコメッティ展のあと、無駄を削ぎ落としていくような、こうした美意識は家具にも彫刻にも(建築にも)、時代を超えてどこか通じるものがある気がして・・勝手ながら
日本人デザイナー紺野さんの世界的なご活躍を、改めて誇らしく感じてしまいました。

 

 

blog category:展覧会等イベント視察
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2017-09-05 | Posted in diary, blog |