diary, blog
Fall semester 03
非常勤講師として担当させていただいております
中部大学工学部建築学科、秋学期の講座がはじまりました。
早いもので、同講座も3年目となります。
少しずつペースをつかめてきたようでもありますが、何とか講義内容も進化させたいという想いもあります。
今期も全15回、よろしくお願いします!
小雨の中、朝1限目の講義前に・・
濡れたウッドデッキに映り込んだ景色が思いがけず綺麗でした。
立ち止まって写真を1枚。
この建築は、大学の50周年記念事業として建設された特別な施設「中部大学 不言実行館/Chubu University ACTIVE PLAZA」でしたので、建築デザインのことはもちろんのこと、大学管財部の方々とイニシャルコストや維持管理のこと、複合プログラムと運用面の工夫、学生さん達が実際にどう利用されるのかなど・・様々な話題がありました。
以前自分が設計を担当した建物を利用者として眺めますと、いろいろなことを感じます。
設計者、施設管理者、利用者の3つの視点が同時に入り交じってしまい、
誇らしくもあり、不安感もあり、未来へ向け 頼もしくもあります。
ちなみに、写真のスチール手摺のデザインについて・・
設計時を思い出しながら、少し振返ってみたいと思います。
↓竣工後 間もない頃、手摺を斜めに見た写真はこちらです。
・縦材(手摺子)は、16×40mmのスチール角パイプ
・最上部の頭つなぎ水平材(笠木)は、6×50mmのスチールフラットバー
・中段の手摺は、φ27.2mmのスチール丸パイプ
という部材構成です。
縦材については、部材としてもう少し細い、無垢のスチールフラットバーとしがちなところですが
あえて偏平の角パイプで無骨に感じない程度のサイズ(太めのフラットバーにも見える)にしています。
そのことで、コストも抑えています。
ちなみに透け感が過ぎますと・・
落下防止の安全性はもちろんのこと、見た目の安心感がどうかということや
下階からの女子学生の足元の見え方などについて
ご意見(主に学内の年配の方から)をいただくこともあります。
それらも踏まえ、斜めに見るとそれなりに視線は遮られ、また正対して見れば1枚目の写真のように
背後の景色も見通せる部材断面・ピッチ・プロポーションとしています。
縦材に対して相対的に上部の水平材の存在が、より薄く感じられるよう、リズムを刻むデザイン上の細かな意図もあります。
また縦材の足元も、ウッドデッキのレベルから立上がりが無く、そのまま視線が抜けるようにスッキリおさめるかどうかも重要です。
そして人の手で触る握りパイプも、太すぎず、細すぎず・・
建築の設計者の好みも様々で、とにかく細く・鋭く・シャープに・・というギリギリを求める事例もありますが、ここでは既存のキャンパス内の景観にも静かに調和させることを大切に考えました(といっても既存建築群と全く同じデザインではなく、さりげない工夫を込めて進化させたつもりです)。
建築の表現は、強いインパクトを与えても良い影響力を持ち続けるものと、一歩間違えて時間に耐えられず後に無粋なものになってしまうもの、あるいは控え目に映るものであっても長く価値が持続するものなど、実に様々です。
どちらかといいますと、ここでは後者の方向性、
全体としては一見、どこにでもありそうな普通の手摺デザインに見えるかも知れませんが、
建物の抱える事情に合う、絶妙なバランスを意識し・・
基本姿勢としては、トレンドに左右されない、抑制の利いた安心できるようなデザインを状況に応じて丁寧につくることを心掛けています。
こした「建築デザインの作法」とでも言えるような、建築への感性を前職で少しずつ教えていただいたのではないかと・・。
そんなデザインアプローチがいつの間にか私なりの身体感覚としても徐々に定着し
居心地良く感じるのかなと、この手摺を見て思ってしまいました。
当り前のような話題で、何だか長くなってしまいました。
最後まで目を通して下さいましてありがとうございました!