diary, blog
加賀 片山津温泉 総湯
昨日紹介させていただきました、山代温泉から近い
こちらも石川県加賀市にあります「加賀片山津温泉 総湯」へ行ってきました.
柴山潟と白山連峰を望む絶好のロケーションに建つこの施設は、1階に温泉施設(公衆浴場)、2階に喫茶「まちカフェ」という構成です.
もちろん設計は、谷口建築設計研究所(建築家:谷口吉生)ということで、温泉利用のほか、建築見学を楽しみにして・・
建築の竣工は2012年、当時の施設名は「加賀片山津温泉 街湯」だったようです.雑誌発表時(新建築2013年10月)でもタイトルはその表記でしたが、
その後「加賀片山津温泉 総湯」に名称変更されています.
地域の温泉文化を継承することからイメージしますと、個人的には後に定めた「総湯」の方が雰囲気があっていいな、と感じます.
外観上、同設計者による「葛西臨海公園展望レストハウス」(1995年 東京都江戸川区葛西臨海公園敷地内)を想起しつつも、施設の左右端部にある自立ガラスのファサード越しに広がる外部テラススペースがこの建築の特徴の一つと言えそうです.
外部階段から直接、この絶景の外部テラスへアクセス可能です.
このテラス席の下部1階には、男女特徴が異なる浴室「潟の湯」と「森の湯」が配置されています.
テラスに2カ所ボックス状に立上がっているのは、下階の洗い場へ自然光を落とすトップライトでした.
ちなみに浴室は日替わりで男女入れ替わり、私が訪れました日は男性が「森の湯」でした(少し残念).
浴室内もシャープな建築外観同様、要素を極力削ぎ落としたミニマルな表現で、設計関係者にとってはリラックスするというより少し緊張感のある空間です.
背筋を伸ばして利用させていただきます・・というような印象でした.
「日本一現代的に洗練された温泉施設」と言えるかもしれません.
でも地元の皆さんは、ごく当たり前の日常のお風呂として利用されていましたので、そこもちょっと面白い雰囲気でした.
場所も近く、ほぼ同時期に建設された山代温泉の古総湯・総湯とのギャップ!
どちらの温泉施設もその個性は素晴らしく、それぞれ日本を代表する建築家の仕事でありますが、建築の多様性、奥深さを感じずにはいられません.
片山津温泉 総湯は43度という高めの温度で、お湯と建築にシビレるような経験をさせていただきました!
2階のカフェへと続く室内の階段・通路(電動ロールスクリーン日除け)
通路部分からも気持ちのよい眺望
柴山潟側のファサード
施設メインプローチ脇スロープを下ると、建物の下をくぐって柴山潟の護岸側へ抜けられます.
柴山潟護岸を活用した、湖畔遊歩道が建物周辺にまで整備されています.
少し離れたところには、桟橋の先にある「浮御堂(うきみどう)」も見えます.
施設利用後、駐車場へ向かうところで振り返って1枚.
護岸の立上がりが小さめの擁壁が威圧的でなく、とてもいい感じだな、と思いつつ・・
すぐ脇にある、スロープが気になりました.
スロープ踊り場だけが高い位置にあり、斜路はどちらからも同じ上り坂?
車椅子利用者には何とも酷な???
あるいは眺望のためのお立ち台???展望にしては高さが低い?
うーん、まさかこんなところで建築「トマソン」じゃあるまいし・・
でも少し落ち着いて考え、
護岸堤・防潮のための水返し機能と
湖畔遊歩道へのスロープアクセス両方を可能にする仕掛けだったのか.
と私なりに理解しました(間違っていたらすみません).
踊り場だけが高いスロープは
おそらく事例として極めて少ない、何とも優しい設計なんだと思います.
ここをはじめ訪れた時は、メインの建築に目が行ってしまいましたが
帰り際には、この水際のデザインが秀逸ですごくいいなぁと感心しました.
建築のメインアプローチとなる長いコンクリート打放し壁を背景に、水平に伸びる護岸堤が非常にマッチしています.
加賀市の公園の一部として整備されたと思われますこの一体の修景については、安全配慮や維持管理、予算、工事区分といった設計手続き上の様々な難しいハードルを超えた結果ようやく実現したものと推察されます.
建築を美しく引き立たせているような、この周辺護岸堤整備へ込められたであろう並々ならぬエネルギーに感服します.
自分の中では、柴山潟の湖畔遊歩道との親和性を感じさせるようなこのスナップ1枚が、帰り際に建築の印象を強く残すこととなりました.