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上小沢邸 最後の見学会

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建築家、広瀬鎌二(1922〜2012年)先生の設計で
1959年竣工の住宅「上小沢邸」の見学会に行ってきました。

残念ながらこの度、「上小沢邸」が解体されることが決まり、3/28(木)に最後の見学会が1日のみ開催されました。

小住宅ながら、DOCOMOMO JapanのNo.106にも選定された建物です。
これまで建物の保存のためにレストランとしての運用もされていましたが、恥ずかしながら私はこれまで実際に建物を見学したことはありませんでした。
文化庁のKさんからご案内いただきましたので貴重な最後の機会を逃さないよう見学させていただきました。

※DOCOMOMO:ドコモモは、モダン・ムーブメントにかかわる建物と環境形成の記録調査および保存のための国際組織。
DOCOMOMO Japan では、日本の近代建築の再評価のための活動を行うとともに、取り壊しが予定される近代建築について保存要望書を提出す等の保存活動に取り組んでいます。

 

 

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事前予約者数は300名ほどとのこと。
見学開始時間より少し前に到着しましたが、既に見学者多数の状況でした。

 

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エントランスまわり。
竣工当初とアプローチの仕方が少々異なるようです。
南のテラスを浮かせるように見せる改修を行なった際、こちらにも手を加えたものと思われます。

 

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板状のステップ。

 

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玄関のガラスドア脇
コート掛け3つ、味わいのあるものでした。

 

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内部のコンクリートブロック。
構造材であり、そのまま仕上としても60年!
何とも言えない独特の存在感でした。

 

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現場で寸法を当たりますと、天井高さ2180mmほど。高過ぎず、低過ぎず・・
南テラスに開く大窓と、スレンダーなプロポーションの内部扉の対比など、絶妙な寸法操作感。

 

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キッチンの上部には、丸いガラスブロックを嵌めたトップライトがあります。
(同様のトップライトがトイレ内にもありました)

 

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屋根スラブ厚 100mmに仕込んだガラスブロック。

ただ竣工後から漏水があったそうで、後の改修工事で上部にガラスの覆いが加えられています。

 

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竣工時に寝室だったスペースから、南テラス側を見る。

中央にはクライアントの上小沢さん。多くの方からインタビューを受けていました。
32歳の時にこの住宅を建てられ、それから60年。

広瀬先生の「ミニマリズム」に共感され、これまで愛車のフェラーリ以外はほとんどモノを所有する欲のようなものは抱かなかったとお話しされていました。
生き方全体に対する影響を広瀬先生より受けたと、過去の取材コメントでもおっしゃっています。
はじめてお目にかかりましたが、とにかく90歳代とはとても思えないお話ぶりと身のこなしで、矍鑠とされた立派な方でした。

やはり、良い建築は施主がつくるのだなぁと、しみじみ感じました。
クライアントの上小沢さんがもっと評価されるべきなのかもしれません。

 

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見学会の様子。
建物を惜しむ建築関係者が多いことが伝わってきます。

写真の左手、母屋の南側に見えるカーポートはステンレス製です。
竣工当初からあったものではありませんが、最小限の2本足、タテ樋がないように見えるディテールで、上小沢さんが特に気に入っていたものの一つだそうです。

 

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ステンレスH鋼の小口のみ鏡面に仕上げています。
雨水は支柱の上部に集められ、柱のウェブ材に空いた穴から流れ落ちるH鋼オープン樋でした。

 

私たちが前職でお世話になった第一工房 代表の高橋さんとは、古く武蔵工業大学時代から親交がおありでした広瀬先生。2012年の広瀬先生を偲ぶ会には高橋さんに連れられ、不勉強な私も一緒に参加させていただいたことが思い出されました。それから早いもので7年。そして今回は広瀬先生の建築作品「上小沢邸」へのお別れとなってしまいました。しかし桜も咲く中、最後の見学会に多くの方が集まり、華やかな雰囲気も感じました。
長い間、住宅としての役目をしっかりと果たされた名建築と、その設計者の精神、施主の声に今回触れることが出来まして幸いでした。見学を取りまとめられました「広瀬鎌二アーカイブス研究会」のご関係の皆様どうもありがとうございました。この体験を忘れないようにしたいと思います。

 

blog category:建築視察
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2019-03-28 | Posted in diary, blog |