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安藤忠雄展

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2017年9月27日から12月18日まで国立新美術館で開催されていました建築の展覧会
「安藤忠雄展 – 挑戦 – 」

建築家の個展としては非常に大きな話題となり、最終の総入場者数は、30万102人に達したそうです。

展覧会へは会期終了より少し前に足を運んでみました。
その時の来場者は、建築関係者よりも一般の方、海外(主にアジア?)からの旅行者と思われる方が多いように見えました。

 

作品は、設計活動初期の住宅から、最新の海外プロジェクトまで、半世紀におよぶ活動が紹介されています。
中でも野外展示場に原寸で再現された「光の教会」は、やはり目玉展示の一つです。

これは展示物でありながら、建築物として国立新美術館の増築扱いで確認申請をして実現させたとのこと。
建設費は約7千万円。さすが安藤さん!ですね。

オリジナルの「光の教会」は現場で打設してつくられたコンクリート打放し仕上の建築ですが、
原寸展示のこちらは、鉄骨の軸組みに打放しのテクスチャとなっている薄いコンクリートパネルを内外に張っています。荷重条件や建設・解体の工期等の事情でそうした選択となったと思われますが、そのことで建築系の方からはこの展示には賛否様々な意見がありました。

フェイクでつくることに意味があるかないか・・

個人的には「原寸模型」という表現が正しいと感じました。
本物と同じ空間サイズでかつ極めて実物に近いテクスチャを与えた模型 として見た私には、実際の光と空間を体験出来る素晴らしい展示だと感じました。
建築を学び始めた20年以上前、実際の「光の教会」を見学させていただいた体験が思い出され、感慨深いものがありました。
当時の自分の記憶と身体感覚があやしいからでしょうが、今回の展示の方が何だかちょっと大きいかな?と感じました。
外部に設置された展示状況がグランドレベルより基壇状に1段上がっていたことが影響しているのか・・
そう感じたのは私だけでしょうか。

 

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光の教会と、展示室内のあと1カ所は撮影可です。ここ光の教会内部ではほとんどの方が写真を撮っていました。
インスタグラム、Facebookなどに投稿・拡散されることを狙って「撮影可」としているようです。

こうして私も後れ馳せながらブログ記事に・・してますね。

 

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正面の十字スリットおよび脇の開口部は、ここ原寸展示では「窓ガラス無しのモデル」でつくられています。
建設当時、安藤さんは窓ガラス無しの外気が入る建築が良いと考えていたそうですが、クライアントはそれは望まず(冬の寒さから当然でしょうが)・・この展示でリベンジされたとのこと。
何十年経っても、あきらめない!という建築家の意思、意地?を感じます。
そのことで内部空間の透明感、伸びやかさが強まっているのかもしれません。

 

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ちなみに、原寸「光の教会」出入口上部には
しっかり避難の為の誘導灯も設置されていました。実際の建築に法令上必要となる設備です。

 

 

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もう1カ所撮影可となっていました、直島のディスプレイ。
この模型を含め、大型のいくつかの模型制作は、学生さんの作業と聞きました。こうして協力者をどんどん得ていくやり方も、建築家の職能の一つと言えそうです。

 

展覧会はどのプロジェクトも、とにかく図面と模型の迫力で、来場者に強く訴えるものがありました。
音声ガイドを含む各所解説では、建築的な難しいロジックをほぼ示すことなく、一般の方へもわかりやすい表現で感心を集めているのは、やはり特別なセンスだと感じます。
世界中に安藤ファンのクライアントを持ち、そして特別な建設事業を決断していただく、「建築への情熱」、「言葉の力」そして安藤さんの「人間力」が並大抵ではないのだと思いました。

 

年末に今年の展覧会を振返り、これだけ注目された建築展は過去に無くダントツ1番だろうと想像していました。
しかし、同美術館でほぼ同じ3ヶ月間開催された「草間彌生展」は51万人超え、さらに2017年最多入場者数の「ミュシャ展」は65万人超え、とのことです・・
他の分野のアートに負けないくらい、これからさらに建築や建築家への感心が高まって欲しいものですが、建築を楽しんだり理解したりするには、文化も経済も技術もデザインも絡み合った奥深い世界観への共感が必要な気もします・・単純に数の比較ではないのかも知れません。しかし、作品展示に限らずご本人のギャラリートークも多く組み込まれ、建築展でどこまで来場者数を伸ばせるのか、ということもきっと安藤さんの「挑戦」の一つだったのだろうと感じました(美術館から出展依頼時には10万人が目標だったそうですから、結果はその3倍!)。

他の建築家には真似の出来ない「安藤忠雄展 – 挑戦 -」を見させていただき、日々の活動への勇気をいただいた気がします。ありがとうございました。

 

 
blog category:展覧会等イベント視察
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2017-12-25 | Posted in diary, blog |