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「旧千代田生命本社ビル/村野藤吾設計」見学

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目黒区総合庁舎(旧千代田生命本社ビル/1966年 村野藤吾設計)
建築ガイドツアーに、先週参加してきました.

曇天、一時小雨の天気でしたが、約2時間半ほど優美な建築を堪能することができました.
参加者は、見学の都合上いくつかのグループに分かれ、ガイドしていただく方の解説を聞きながらて施設をまわります.
今回私は幸運にも、村野・森事務所の所員でいらっしゃる佐藤さんのガイドでご案内いただけました.
設計者・村野先生のお考えやエピソードを詳しくお話いただき、大変勉強になりました.

ガイドツアーは、千代田生命本社ビルが目黒区総合庁舎にコンバージョンされた2003年以降、震災の年を除き継続して11回開催されているとのことです.
建築を学ぶ人もそうでない一般の方にとっても、文化的価値の高い名建築に触れる大変貴重な機会だと感じました.
恥ずかしながら、もっと早く知っていれば・・と思う素晴らしい企画です.
今回通常コースで申し込みましたが、また次の機会に別のガイドコース(和室中心コース、コンバージョンコース)もありますので参加を考えてみたいです.
ご興味のある方は、是非一度参加されると良いのではないでしょうか.
お申し込みは、目黒区美術館のホームページから.

目黒区総合庁舎(旧千代田生命本社ビル)建築ガイドツアー

今さら私が建築の解説をするまでもありませんが、個人的には「面取りの美学」とでも言えばよいのか、村野流デザインのこだわりを強烈に感じる建築でした.
建築の出隅(ですみ)と入隅(いりすみ)、柱型などとにかく全ての箇所が面取りされています.
部位によって大小様々な寸法・直線・曲線で・・エッジを和らげる操作が徹底されています.

写真等で多少は知っているつもりでも、こうして実物を拝見しますと、超絶なる工芸品的つくりこみにただただ圧倒されます.
建築のデザインに対する総エネルギー量が凄く、「デザインの解像度が高過ぎ」というくらい.
ほとんど家具・プロダクトレベルの精度でつくるような・・その仕事を想いますと、ちょっと気の遠くなる建築でした.

 

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キャノピーは、うまく言葉で表現出来ないほどの優美な存在感を放っています.
ランダムな柱と雨樋の平面配置、かつ各円柱は上部がわずかに細くなるテーパー形状です.
庇の断面も独自の手の込んだデザインで、アルミの曲線が美しいです.

 

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笠木のデザインも鬼瓦風の装飾.
石種の選び方、サイズの分け方も徹底しています.
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アルミダイキャストのファサード.
デザインへのエネルギーだけでなく、お金のかけ方も尋常でありません.

 

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柱と壁の表現で、左右の対称性を崩した、エントランスホール.
8カ所のトップライトは、ガラスモザイクで2カ所1セットで四季が表現されています.
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柱型の大きな面取り.
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ゲートの構えをなすガラスアートワークと、足元のR加工の面取り巾木.
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工芸品的階段.
佐藤さん曰く、「世界一美しい階段と言っても良いのでは」と.

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階段は、特に段裏のディテールが美しい.
中央の吊り材には当初、照明器具が設置され、装飾的に扱われています.
現状は、庁舎への改修時に、上段の手摺と落下防止の透明アクリルが追加されています.
オリジナルの階段はどれほどエレガントだったのか・・

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階段吊りロッドの受け部材もエレガント.

 

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茶室と茶庭.
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コールテン鋼の垂木で、極薄庇を実現.
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出隅のディテールが秀逸.
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躙口を室内より見る.
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村野先生の手書きの繊細なライン.
独自のデザインをつくり出すも、同じデザインを他で二度と使わないのが村野流なのだとか.
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最近、紛争で歴史的な遺産が破壊されたり、近現代の名建築であっても経済事情等で取り壊されたり、建築が長く残るのはデザインレベルとは別次元ですごく難しい・・というニュースを耳にします。
天才的な建築家の建築が生き残ったこの事例をお手本に、他でもコンバージョンと耐震補強をしながら自然災害にも堪えられる建築遺産が増えて欲しいものです!

 

 

 

blog category:建築視察
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2016-04-19 | Posted in diary, blog |