diary
リノベーション現場 04
住宅のリノベーション現場で、おそらく国内でも事例のない?床仕上げを試みています。
このご相談は、一戸建て既存住宅を、利用者の世代交替などの事情から、いくつかの室の内装イメージ、外構アプローチまわり・植栽の改変を行ないたいというものでした。
室内の既存床については、竹集成材フローリングで表面に光沢のあるウレタン塗装がしっかりと施されていました。この床のオレンジっぽい色と強いツヤ表現を、現代的な淡いグレー系のイメージに換えたいというご要望から検討がはじまっています。
当初、床材の取替え案も検討しましたが、床暖房配管を傷めてしまうリスクが高いために諦め、既存床表面を薄く削って対応する案に至りました。
採用案は、海外でも多く実績を持つスウェーデンのフローリングメーカー「Bona社」のリノベーション技術です。基本は老朽化した無垢のフローリング表面を約0.8mm削った後に、研磨と塗装を行なって新品同様に蘇らせるものですが、今回はバンブーのフローリングに適用し、かつ淡いグレーの染色カラー&ツヤ消し水性ウレタン塗装の手順で仕上げます。
写真で床色が濃いところは削る前、白っぽくなったところが削った後です。
Bona社の特約工務店となっている専門の施工者にお願いし、隅々まで丁寧に仕上げます。フローリングメーカーさんや専門施工者さんの話では、今回工事と同仕様の施工事例は聞いたことがないそうです。
施工は、床の広い部分は自走機械で行ないますが、壁幅木や家具足元ギリギリの入隅部はハンディな機械で丁寧に対処します。
今回キッチンそのものは既存を利用し、床材のみ改修しイメージを刷新しています。床改修後には「はじめからそのような仕上がりだった?」と感じるほどの印象に。
竹の木目と、素地のベージュ系の色味が染色グレー色と程良く混ざり、他では見かけないテクスチャを生み出しています。光の当たり方などで、微妙な色彩の変化も・・クールさと優しさが同居したような不思議な雰囲気です。
事例がないといっても、単にバンブーフローリングにこのリノベ技術を組合わせること、さらにそこにグレー染色をするパターンがこれまでにないだけのことで、設計で新たな技術開発をしたわけではありません。しかし結果的には、世界に1つかも知れないオリジナルな床表現?になり、とても興味深い床仕上げがつくり出されました。
今回工事では、ダイニングルームの間口一杯にベンチソファも製作しました。
薄いグレーのクッション張地、さらに木部もオークの表情を残しながらうっすらとグレー色をのせています。床と家具、控え目なグレー系カラーコーディネートですが、シンプルで永く飽きのこないアイテムとなってくれるでしょう。
座面下部には、全面たっぷりの収納!
左右非対称なデザインで、全長3メートルを超える伸びやかなソファです。向かって右側の木部には、携帯端末などを充電し易いように家具用コンセントを用意しました。
さらに今後手配するダイニングテーブルとチェアの置き家具セレクトも、この空気感に合うものを検討中です。この室は、壁・天井は既存のまま改変無しですが、その他の小さな工夫の積み重ねでかなり楽しめています!
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リノベーション現場 03
住宅リノベーションの現場打合せ。
現在、建築内装工事と並行して、外構の施工も進んでいます。
コンパクトなアプローチや庭でもヨーロピアンテイストのイメージにしたい!
という当初のクライアント要望から、既存の鉄筋コンクリート曲面よう壁やコンクリートブロック壁を残しつつ、新規仕上材としてレンガタイルを張る計画としています。
イタリアでつくられるこのレンガタイルには、職人さんの手仕事の味わいがあります。木型に砂をまぶして最終的に手で脱型する作り方のため、レンガ1つ1つに独特な表情が出ています。そのレンガをスライスし22mm厚のタイル製品としたものです。
設計では仕上がりイメージはもちろんのこと、単価・数量などバランスをあれこれ悩みましたが、東京駅丸の内駅舎復原工事に使用する化粧煉瓦の復原なども担当・経験している私の古くからの知人に相談するなどして、製品選定しました。ちなみに日本国内で同様の作り方をしている工場はないそうです。またこれを住宅の外構に使った事例もほとんどないとのことです。
アプローチには大きな天然石(砂岩)のステップを計画しました。
道路前の門扉から住宅玄関までかなり近い距離なのですが高低差が1m近くあり・・そこを何とか自然な景観に仕立てようとしています。
本日、石材の運搬、現場での加工・設置が開始されました。
女性のハイヒール歩行などにも支障がないようにフラットで極力目地のない大判ステップとしました。
歩幅も高さ(蹴上げ寸法)も無理のない位置にまずはセットできたのではないかと思われます。
これから石の周囲にも景石、砂利や植栽をアレンジしていきます。
小さなスペースで既存の建築や擁壁を生かした改修でありながらも、出来るだけ表面的なフェイク材でない本格的な空気感漂うガーデン・アプローチのイメージに近づけて行きたいです。
きっと喜んでいただけると・・現場のみなさんも丁寧な仕事をしてくださっています!
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「建築のなか→ vol.7」
イベント「建築のなか→ vol.7」に参加してきました。
日時:2016.11.26(sat) 18:00-
会場:CO2WORKS (愛知県 名古屋市)
テーマ:「建築と写真と編集と」これからのメディアとしての在り方
イベント「建築のなか→」は
「継続的な批評性のある場を作ること」
「建築の見方の枠を広げること」
「建築の横のつながりを作ること」
を目的とした建築プレゼンイベントで
私は第5回のときにお邪魔して以来、2度目の参加です。
今回のプレゼンターは
建築写真家 谷川ヒロシさんと、フリーランスの編集者 柴田直美さんのお二人。
お二人のレクチャー後に40名の参加者全員でワークショップを行ない、その後懇親会というイベント内容です。
谷川ヒロシさん
建築設計もご経験された後に、建築写真家として活動されています。トロロスタジオ代表、
柴田直美さん
建築専門誌「a+u」編集部を経て、アムステルダムのグラフィックデザイン事務所thonikに勤務され、その後フリーランスの編集者として国内外で活動されています。
ワークショップ:「建築とメディアの関係を考えよう!」
参加者を6グループに分けて、建築雑誌編集のワーク。誰向けにどんなテーマ・メッセージを?表紙は何がいい?
表紙含め計7ページのレイアウトを考え、それぞれ発表!
そして編集された案に対し、谷川さんからは写真を撮った方の気持ち、柴田さんからは編集上のアドバイスなどコメントをいただきました。
谷川さんからは、建築写真を撮る際にどんなことを考えているか。そして柴田さんからは、編集作業のポイント、海外の建築事務所(MVRDV、ヘルツォーグ&ド・ムーロンなど)との特集号内容やりとりなど・・印象に残りました。
お二人とも大学で建築を学ばれたという共通点があります。
柴田さんから、編集作業で誌面の部分(ディテール)と全体の意味やバランスを常に俯瞰して捉えながらまとめていくのは、建築をつくる意識に近いのではないかというお話もありました。
建築をつくることと、それを伝える(見せる)こと。それぞれの専門性が重なり合いながらもやはり異なる視点も感じられた、そんな学びのあるイベントでした。
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堀部安嗣さん「ひとが風景をつくる、ということ」
11/12に開催のイベント
5×緑 森の学校 2016 連続セミナーの第4回
会場:合羽坂テラス(東京・曙橋)
堀部安嗣さんに聞く「ひとが風景をつくる、ということ」に参加してきました。
同企画 第1回目、話し手がランドスケープアーキテクトの長谷川浩己さんの回にもうかがいましたが、コンパクトな会場で、アットホームな雰囲気のレクチャーです。話し手の方と心穏やかに一時を過ごしながら学びもあるイベント。
今回の話し手は、建築家の堀部安嗣さんです。気持ちのよい秋の午後、建築・ランドスケープ、どんなお話をしていただけるのか楽しみに・・
質の高い建築をつくり続けることで知られる堀部さんですが、今回はご自身の作品解説が主というより、日本建築の良いところと言える、内部と外部(建築とその周辺自然環境)の接点にフォーカスされたお話が中心でした。
まずはじめに、ご自身が好きで繰り返し訪れるという伊勢神宮(必ず早朝に行かれるそうです)、京都の高桐院、蓮華寺、高山寺、奈良の慈光院、奈良公園の大仏池のスライドからその魅力について。
そして海外の設計事例として、学生時代にランドスケープの影響を受けた、アスプルンド「森の墓地」をはじめ、カルロ・スカルパ「ブリオン・ヴェガ墓地」、アルヴァ・アアルト「自邸」、「マイレア邸」、「セイナッツァロ村役場」の建築と自然との関わりについて。
最後にご自身の設計された住宅、「竹林寺納骨堂」、神戸の里山住宅博でモデルハウスとしてつくられた「ヴァンガードハウス」について、既存樹木を残すことの重要性や、建築の住まい手だけが満足するだけでなく周辺環境にも貢献できるような『利他的な建築』イメージについてお話されました。
最新事例でもある「ヴァンガードハウス」では、この32坪くらいの建築が住宅としてはいろんな意味でちょうど良いと感じたそうです。
豊かな時代になって50〜60坪程度の住宅が多くつくられた時期もありますが、家族構成の変化でお子さんが住まわれなくなった住宅に、夫婦あるいは終の住処として一人で暮らす時には、大きな住宅では後に寂しさを感じてしまいます。
30坪前後だと、4人家族でにぎやかに過ごしても機能的で使いやすく、一人で静かに暮らしても場所を持て余すこと無く、メンテナンスも含めて目が行き届く空間になると・・
建築を深く見つめてこられた建築家の言葉には、重みが感じられました。
イベント会場テラスには
日本の在来植物を使って都市に緑を増やす「里山ユニット」と名付けられた緑化アイテムが並んでいます。テラスの植物は、合計100種以上の在来種でつくられているそうですが、置き型のユニットであっても秋の彩りが十分に感じられました。
レクチャー後のティータイム休憩。
お菓子などいただきながら講師の堀部さんや参加者同士の会話のひととき。
私も堀部さんと、昔のことなど少し立ち話をさせていただきました。
レクチャーでは堀部さんの建築設計の原点の一部にも触れることができ、静かに刺激をいただくイベントとなりました。
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アルバレス・ブラボ写真展
名古屋市美術館で12/18まで開催中の展覧会を拝見しました。
20世紀写真史に大きな足跡を残したメキシコの巨匠、マヌエル・アルバレス・ブラボ(1902-2002)。
メキシコ革命を経て、壁画運動や前衛芸術が渦巻く激動の1920年代末に頭角を現し、最晩年の1990年代末に至るまで、一貫して独自の静けさと詩情をたたえた写真を撮り続けました。約70年におよぶその仕事の魅力を、192点のプリントと多数の資料によって紹介する、国内初の本格的な大回顧展です(展覧会概要より)。
展覧会情報はこちら
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2016/bravo/
写真家として、20代から「100歳の誕生日展」までモノクロ写真を生み出し続けた、その表現の一貫性に視線の強さを感じました。素晴らしい詩情に満ちた作品群に感服します。図録も280ページと立派にまとめられています。
また常設展でもメキシコに関するコレクションを合わせて見ることができ、静かに充実した一時を過ごせました。
かなり久々に名古屋市美術館に行きましたが、入口脇の定礎板を見ますと昭和六十二年とあります。建築設計は故 黒川紀章氏によるもので、1980年代と一目でわかる建築スタイルですが、手入れが行届いているようで竣工後約30年と感じさせないほどのコンディションに感心しました。時代の流れ、今見ると過剰なつくりに感じるところも多々ありますが、当時の作り手が建築に込めた熱量の凄さは、今なお冷めきらずに独特な存在感を示しています。
ただ展示室1−2階移動の内部動線は毎回・・・と美術館建築の動線と見せ方の重要さを痛感します。
設計実務に携わって気が付けば18年・・
学生時代には一般利用者としての視点しかなかったはずですが、いつの間にか建築のデザイン・機能、材料・コスト、維持管理・運営のことなど、聞かれもしないのに様々なことが同時に気になってしまいます。設計打合せの後に、同業の友人と男2人で足を運んだから余計にそう感じたのかもしれませんが。
写真家の70年に及ぶ表現者としての活動、1980年代の建築の現在、設計者としての視点・・。個人的には、長いスパンで「時間」をとらえることの重要さのようなものをふっと感じさせてくれる展覧会でありました。
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鹿児島睦の図案展
鹿児島睦の図案展2016
東京都港区北青山にありますdoinel(ドワネル)で11/15まで開催中の展覧会について。
鹿児島さんは陶芸家として活動をスタートされましたが、陶芸以外の図形や素材に描いても独自の構成力とオリジナリティのあるモチーフで図案を構成されています。
「陶芸家・鹿児島睦の作品世界の魅力は図案にある」ということから図案を紹介する展覧会がはじまり、今回で4度目の開催とのことです。
昨年に引き続き、先日足を運んでみましたが、今回は鹿児島さんご本人がライブペイントをされるタイミングで、コンパクトな会場は見学者で一杯になっていました。
原画について解説される、鹿児島さん。
本来の創作活動の陶芸は主に日中行ない、その後の時間でこの図案作成をされていたそうです。アルファベットに書き込む図案密度が、その日のちょっとしたコンディションの違いなどに現れることや、中に描く動物選びをどうされたかなど、非常に優しい語り方で創作時のエピソードもご説明くださいました。
原画「L」はライオン。肘掛けポジションは、他のアルファベットの動物にも・・
完成図案ポスターはこのように。独特な世界観が滲み出ています。
こちらは通常創られています陶芸作品。
陶芸の活動領域を広げるように、アーティスト・鹿児島睦として、新たなフィールドで才能を発揮されていました。
創作者の素顔もうかがうことができた素晴らしい展覧会で刺激をいただきました。
展覧会の特設webページ
http://zuan-zokei.com/zuan-exhibition2016
自分たちの建築設計活動にも日頃から知見を広げる意識を忘れず、一歩づつ取組んでまいります・・
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トラフ展 インサイド・アウト
TOTOギャラリー間で2016年12月11日まで開催中の「トラフ展 インサイド・アウト」へ行ってきました。
建築からインテリア、家具まで幅広く手がけてきた鈴野浩一氏と禿(かむろ)真哉氏による建築家ユニット、トラフ建築設計事務所さんの個展です。
創る過程をも楽しむトラフさんのアタマの中をのぞき、思考の過程を追体験できるような展示構成になっています。
まずはじめに目にするのは、3Fメイン展示空間ですが、雑貨屋?おもちゃ屋?といった雰囲気の楽しげなアイテム群・・
大きな展示テーブルには、Nゲージの線路が敷設されて「トラフ号」が走っています。その意図は、4階での映像展示(撮影不可)を見ますと、おわかりになると思います。
ちなみに3F展示では、テーブル下にまで仕掛けが巡っています。
中庭にも、いくつかの作品があります。
「カラフルなAAスツール」は、1脚ですと小さく軽いため、子どもでも扱えるサイズの木製イスです。水平方向に重ねた連結が可能で、長くベンチのようにも変化させられます。
ギャラリー間の中庭に昔から常設で存在します、大きな石・・
なんと目が書き込まれており、今回の展示のひとつ「魚」になっていました!
こんなところにも作品「スカイデッキ」が設置されています。
展覧会では、様々なものが建築やデザインのヒントになっていることが100作品によって示されていました。
スケールを変えること、視点をかえることで見えるもの、感じるものが変わっていく体験を・・とのメッセージが伝わってきます。
その後、2Fのブックショップに立寄りますと、店内でトラフさんの作品の1つ「ビルディングパズル」というアイテムの販売もされていました。
娘から欲しい!とリクエストありましたが、「じゃぁ家に帰って一緒につくってみようか!」と購入を見送り、真似をさせていただきますと・・
6歳の都市計画?
描かれた建物配置ラインに、娘から階数の指示をもらい、建物だけ垂直に立ち上げるサポートをしました。
Y字平面のような低層の学校、隣接する公園、高層棟は4Fまでお店で5F以上はマンション、1つだけ巨大な人はオブジェなのだとか・・
親子で足を運んでも、何か創作のヒントになりそうな面白い建築の展覧会でした!
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リノベーション現場 02
住宅リノベーションの現場打合せを行ってきました。
クライアントにご参加いただき、解体の状況を一緒に把握しながら、最終的な仕上材の確認をさせていただきました。
建築は、築年数も浅く、改修前でも十分にきれいな状態の住宅ですが、今回のリノベーションにより構造耐力上影響のない壁を一部無くして広がりを持たせたり、使い勝手を向上させる動線の見直しなどを行っています。
これまでも改変する部分と現状を生かす部分が混在するインテリアの全体イメージについて、設計時点からクライアントとの意見交換を重ねて進めてきました。
そして最終的には現場で、床材や壁・天井面の塗装サンプルなど実物を現場監督さんに全て揃えていただき、クライアントと一緒に関係を見ながら確認をし決定します。
今回は主に造作家具として設置するロングソファの生地サンプルチェックでしたが、多くの候補素材から価格と性能・イメージの全体バランスの良いものを選定できた気がします。
クライアントも、現場の臨場感からイメージにリアリティが湧いてきたと・・いつも以上に嬉しそうな表情を見せてくださいました。
元気のよい明るい現場監督さんと一緒になって、現場を大切に進めていきたいと思います。
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二子玉川にて
再開発が進みました東京 世田谷の二子玉川駅周辺は、様々なSHOPが加わり以前にも増して便利で魅力的なスポットになっています。
先日はそのうち、二子玉川ライズ内にある BANG&OLUFSEN さん、その隣にある arflex さんにちょっと足を運んできました。
デンマークが生んだ、唯一無二のオーディオ・ヴィジュアル・ブランド、BANG & OLUFSEN(バング&オルフセン)。
インテリアにしてアートオブジェと言われるほど、究極的なクオリティを保ったプロダクトデザインだと思います。
今回はストアマネージャーの小川さんから直接、製品の詳しい解説を聞く機会をいただき、二子玉川店のゆったりとしたディスプレイ空間で実際に体感することに・・
入口は蔦屋家電さんの動線ディスプレイ空間から、という設えになっています。
入口正面に展示されている円形のスピーカー「BEOPLAY A9」を一つ見るだけでも、洗練されたデザイン・クラフツマンシップを感じます。ハイクオリティーかつラグジュアリーというものから、少しカジュアルラインにアレンジされたアイテムまで楽しめます。
小川さんからは、デンマークの本社や製造工場の様子までお教えいただけました。また建築の引渡し後にオーディオ製品を考えるのではなく、設計時点でこうした製品をどう配置するか検討できるとベストですねと。確かに・・
そして写真手前のテーブルは
隣のarflexさんの家具「フィヨルド」というネーミングの木製テーブルが配置されていました。この家具デザインは、建築家とのインテリアコラボレーションも数多く手掛ける藤森泰司さん。グレー系の色調でインテリアに優しく馴染んでいるように感じました。
左手のソファも
上質なグレーの濃淡生地で表現された「BRERA」というarflexさんアイテムのコーディネートです。
店内の奥には、「BEOLAB 90」という独特な形状のスピーカーがあります。
内部には18個のスピーカーユニットが1台ごと正確に配置されているそうですが、これは正直なところ、体験してみないとうまく伝えられない程の圧倒的な音響技術とデザインの融合でした。
製品開発は、「ベストの中のベストであらんことを」という理想の追求からなのだと・・経済の合理性とはどこか別次元で生み出されるデザインへの取り組み方について刺激をいただき、大変勉強になりました!
検討中の家具について、サイズやテクスチャ確認をさせていただこうと、お隣の arflex さんへ。
店内は、恵比寿の本店とは少し違った優しい雰囲気のディスプレイ。
オーディオにはBANG & OLUFSEN製品が見られ、相互に連携があるようです。ショップ間の近隣コミュニティのような空気感が、私は良いかたちの運営だなぁと感じました。
いくつかのアイテムのうち、グレー塗装ながら木のあたたかみも感じられるこの独特なテクチャが個人的には好印象でした。各木製テーブル、チェア木部も同色対応可能なのも選択肢としてうれしい配慮。
東急田園都市線沿線なので、設計で検討中の家具を実物で確認するのも、夕方さっと立ち寄ることが出来ましたので大変助かりました。
デザインと機能、素材、価格やメンテナンスのことなど、参考になりました。建築と家具のバランスを実物で考えることはやはり重要ですね。アイテムごとにわかりやすい家具解説をして下さった工藤さん、どうもありがとうございました!
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土間のある暮らし
「犬山の住宅」にうかがった時のことを少し紹介させていただきます。
国宝の犬山城 で知られる愛知県犬山市内に計画されたこの住宅は、玄関とその脇の1室をコンクリート土間の床としています。この「土間」は、歴史のある地域の建築的文脈を受け継ぐということと、住まわれる時の機能的なニーズから導き出されています。
ご夫婦の趣味でもある自転車を室内で扱いたいというご要望から、ゆったり広めの玄関スペースと隣接する室も一体的に活用できる土間のある空間が生まれました。
1枚目の写真は竣工引渡し直前のものです。
ちなみに玄関の土間には下足入れがないように見えますが、ご家族の靴も、コートも、その他道具も・・写真左手の白い壁面収納に収まっています。
玄関は、普段リビングに連続するオープンなスペースとなっていますので趣味室の一部として利用されています。
写真右の玄関扉を引戸にしているのも、自転車やベビーカーを出し入れしやすくするためです。
使い勝手と、広々としたイメージだけで土間を採用しますと、一般に冬の寒さが問題となってしまいます・・
しかしこの住宅に関しましては全くその心配がありません。土間のコンクリートを蓄熱体とした輻射暖房とし、厳冬期に土間を裸足で歩いても冷たくないくらいの、心地よい温熱環境をつくり出しています。
2枚目以降の写真は、住まわれて約半年後の様子です。
建具の鉄骨補強フレームからハンモックが下げられていました。ハンモックは足まで乗せられるように伸びるそうで、ご主人もつい気持ち良くなって、うたた寝もされるのだとか。まさにリビングの一部です。
バイクは、ディスプレイスタンドの上段からご主人、奥様、そして床には息子さんの愛車が2台。
幼児期のファーストバイクから、2台目はカッコイイ木製バイクにステップアップしていました。ともにイギリスのEARLY RIDER(アーリーライダー)です。
レザーシートです!
ご家族の雰囲気が伝わってくる、家庭内ショールームのようです。
見ているだけでゲストも楽しくなってくるような、土間のある家での暮らしを見せていただきました。
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リノベーション現場 01
住宅リノベーションの現場打合せがはじまりました。
外部は既存の曲面RC擁壁などを残しつつ、植栽イメージを新たに提案しています。ご要望いただきましたヨーロピアンテイストへ、近隣にはない雰囲気にまとめていく予定です。
インテリアでは、既存フローリング(バンブーの集成材)の素材は生かしながら、ご要望のイメージにリノベーション工事で表現をアレンジさせていただく予定です。こちらはあまり国内でも事例がないテクスチャになりそうだと、クライアントと工事担当の方、私たちも期待しているところです。
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現地審査
ある建築賞で二次審査に進むことができ、先日現地審査をしていただきました。
当日は台風の接近が心配されましたが、幸運にも雨の影響も受けず、建築の内外を確認していただきました。
建築の外装や、周辺のロケーションとのつながりのあるランドスケープについてご質問をいただきながら現地審査ははじまり、内部のプランや意匠、使い勝手などについても全体的に好意的なお話をいただけたような気がしています。
グランドカバーは、芝(TM-9)、イワダレソウ(クラピア)とも良い雰囲気に整っていました。クライアントのお話では、ほぼメンテナンスに手間がかからず助かっているそうです。
永く設計実務をされている審査員の方から「住宅設計経験が豊富な設計者による建築に見えた」とコメントをいただき、素直に嬉しかったです。
建物引渡し後、半年以上になりますが、大変きれいに暮らしていただいておりました。
生活アイテムが加わって、建築もに奥行きが感じられます。
とても素晴らしいクライアントと施工者に恵まれたと感じています・・
結果はしばらくわかりませんが、関係者に良い知らせが届きますように。
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media/homify(日本)に紹介されました/特集記事
WEBマガジン homify(日本)
特集記事にhm+architects 設計「犬山の住宅」が紹介されました。
https://www.homify.jp/ideabooks/1347626/普通っぽいのに普通でない?スタイリッシュな平屋の住宅
前回、韓国語の記事で紹介していただいたhomifyで、このたび日本語での記事に取り上げていただけました。見ていただけますと幸いです。
<homify(www.homify.jp)>
ドイツ、ベルリンを拠点に置くオンラインプラットフォームで
建築、インテリアデザイン、家具デザイン、庭デザイン、その他暮らしに関わる小物等まで紹介しているウェブサイト。
日本を含め23カ国に配信されています。
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Fall semester
2016年度 秋学期の授業がはじまりました。
非常勤講師としても新たなスタート!という想いがあります。
前日は愛知工業大学での設計指導、秋学期の初回でした。
他の先生方と協力しながら、前年度の経験をふまえ指導の仕方についても設計指導者としてレベルアップを目指したいです。
そして本日は、中部大学。こちらでは設計指導のほか、畏れ多くも座学を一つ受け持たせていただくことになりました。
中部大学の池に映る、こちらの講義棟4階の講義室にて半期お世話になります。
中部大学は1万人以上の学生さんが通いますので、雨の朝ラッシュの影響を受けないよう余裕を持って移動しました。しかし講義開始1時間以上前に大学へ到着。ちょっと早すぎました・・
以前設計担当させていただきました施設に立寄り、誰でも自由に使えるラーニングスペースでレクチャー素材を最終確認。講義棟に向かいます!
選択の講座ですが、1年生を主に100名以上が受講されます。
これから建築の専門性に踏み込んでいく学生さんにとって、建築を理解しやすい素材づくりと説明の仕方は?時間配分は90分 詰め込み過ぎず、間延びもせず、うまくまとめられるか? やはり実務経験からリアルなエピソードも紹介したいし・・一人あれこれ考え準備していましたが、やはりそれなりに緊張感もあります。しかし学生さんにとって、安心して学ぶことができる雰囲気を提供したいので、自分が慌てたような解説にはしたくないと思いながら・・
講義は用意したパワーポイントで、「これが今日最後のスライドになります。」と言った後に講義終了の学内チャイム・・
自分の予想以上に時間内でぴったり?おさまり、初回講義を終えることが出来ました。
半期、90分のプレゼンテーションを毎回行うのだと考えますと、講義内容の準備と共にかなりのトレーニングになりそうです。
当然のようにいつもレクチャーをされている先生方、凄いです!
講義終了後、学内を少し散策。
竣工引渡し時には確認できない、施設のちょっとしたスペースを学生さんが実際に使ってくれているシーンを見るとホッとします。何気ない場面も嬉しいものです。
6階カフェ(アロハテーブルさんが学食に初出店しています)の屋上植栽も程良く成長し馴染んできました。
テラス席から西側を眺めると、雨が上がって陽が差しそうな様子。
学生さんと共に、新たな一歩を踏み出したような気がしました。
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シリンダー錠
建築金物を扱うメーカー「堀商店」さんについて、カタログにも掲載されていない少々マニアックな話題を・・
拙ブログで以前「設計者の好みが滲み出るところ」という記事を上げておりましたが、その続きのような内容です。
玄関ドアその他に使用されます、堀商店の錠前(シリンダー錠)の鍵は、下の写真手前のピストルのような形のものが、標準となっています。
鍵穴が丸く防犯性が高い(ピッキングが困難)この鍵は、見た目が個性的で愛着が湧くかたちをしています。それだけでもちょっとオススメしたいアイテムでした。
しかし、カタログ標示していないアイテムが実は、ほかに2種類存在しています。
堀商店さんに直接問合せを行いますと、
中段のフラッグ形状(社内では「旗型」と呼んでいるそうです)と
上段のリング形状(こちらは「トローチ型」と呼んでいるそうです)のアイテムが
裏メニューのように存在し、スペアキーなどで注文可能です。
私は先日、堀商店の松澤さんにそのことを教えていただき知りました。
建築の小ネタとして、胸の内に秘めておきたい気もしましたが、同シリンダーユーザーでご存じない方のためになるかな?という想いもありUPしてみます。
さらに、このシリンダー錠について補足をもう一つ。
シリンダー錠は、建具の内部に設置されますと、その内部機構は普段目にすることはありません。しかし内部には・・
シリンダーの鍵穴裏側には、こんなウサギの顔のようなパーツが!
しかもやや眠そうな表情です。
鍵をまわしてロックした状態が上の写真。
ウサギの顔が回転し、耳部分でしっかりロック!
鍵が設置され、建物が引き渡された後は、毎朝毎晩1日も休むこと無くウサギは頑張ります。誰の目にも触れること無く、何十年と一人建物を守るために働いてくれています。
将来もしも建築・建具の役目を終える(解体する)時には、外の世界へ出して「お疲れ様・・」と労いの言葉をかけてあげたいものです。
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山梨文化会館
山梨県甲府方面に出掛けた際、「山梨文化会館」へ立ち寄ってきました。
1966年に完成した丹下健三の代表作品の一つで、「メタボリズム」(生物学用語の「新陳代謝」を語源とした建築運動)の象徴的な建築と言えます。
16本の円柱と梁とで支えられた存在感のある外観が、やはり特徴。
半世紀を経た現在も、甲府駅の北側景観に圧倒的なインパクトを与え続けている建築です。
DOCOMOMO JAPAN選定 日本におけるモダン・ムーブメントの建築100選にも登録されています。
メタボリズムの思想通り、増築工事が1974年と2005年に行われ、延床面積が合計で約3,800㎡も増えているているところが凄いです。
また改修工事は1990年、1997年、2000年、2013年に行われ、内外装の改修やエスカレーター新設などがあったようです。
現在、丹下建築作品では初となる免震耐震改修工事が行われています。
山梨文化会館に採用された改修構法は、建物地下2階の柱脚部に免震装置を設置して、外周部分の擁壁と縁を切る中間階免震レトロフィット構法。
工事の仮囲いも現状、建物の足元のみでスッキリとした印象でした。
16本の大きなコア柱と呼ばれる直径約5mの円筒柱1本当たりの支持荷重はおよそ24,000kN(2,400ton)とのこと。
そのコア内部は階段、EV、トイレ、倉庫などとして利用されていますが、免震装置の設置工事に際しては柱脚にコンクリートを充填して免震基礎を構築し、油圧ジャッキ等により荷重の受け替えを行いながら柱を切断。その後免震装置を設置してジャッキダウンし、柱の免震化工事が完了、と建築ニュース等で発表されています。
間近に見る円筒柱コアは大迫力です!
コア円筒柱と梁の取り合い部。
梁下にシャッターを納める都合から? 独特なディテール。
建築の外部を一回りするだけでも、各所のデザインに設計者の強い思想と言いますか、執念のようなものが滲み出ていて・・圧倒されます。
施設南西角の柱には、「D&DEPARTMENT YAMANASHI」のサインがあり、ガラスのカーテンウォールとなっている出入口から入ってみます。
エントランス吹抜け。
エスカレーターを上った2Fがお店です。
円筒柱、かなり太いです・・
梁上部に砂利敷き。
スタッフの方に写真確認をお聞きしてから、店内スナップも少々。
ショップカウンターは2つの円柱コアの中央にちょうどおさまって、うまく配置されていました。
コア内に男女トイレ。それなりにタイトな配置でした。
できれば、円筒柱内部の階段室を見学してみたかったのですが・・
トイレ脇から見る外部階段。
窓際のカフェスペースからは、城郭ゾーンを望むことができます。穏やかな場所でした。
こちらは甲府駅の北側、JRと山梨文化会館との間に展開している「甲州夢小路」エリア。
免震レトロフィット技術により、丹下建築がその時代の求める機能性とデザイン性を維持した建築として残り続けることとなるようです。
半世紀後の改修工事が、当初の設計者・施工者によるということも素晴らしいです。
地域の建築文化に留まらず、日本の近現代建築にとって大変明るい話題だと思いました。
ちなみに1966年に竣工した建築を調べますと、
パレスサイドビル/日建設計(林昌二) 東京都
海のギャラリー/林雅子 高知県
アートプラザ(旧大分県立図書館)/磯崎新 大分県
白の家/篠原一男 東京都
ソニービル/芦原義信 東京都
塔の家/東孝光 東京都
国立京都国際会館/大谷幸男 京都府
川合健二邸/川合健二 愛知県
都城市民会館/菊竹清訓 宮崎県
目黒区役所(旧千代田生命本社ビル)/村野藤吾 東京都
などが挙げられ、
これほど特別な建築作品が同一年に多く生み出されていた事実に驚いてしまいます。
既に残すことが出来なくなってしまった建築もありますが、是非とも山梨文化会館のような機能+デザインの保全が全国的に広まってほしいものです。
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media/homify(韓国)に紹介されました/特集記事
WEBマガジン homify(韓国)
特集記事にhm+architects 設計「犬山の住宅」が紹介されました。
韓国語です!
https://www.homify.co.kr/ideabooks/1156711/현대적인-디자인과-온화한-감성이-함께-만나는-집
<homify(www.homify.jp)>
ドイツ、ベルリンを拠点に置くオンラインプラットフォームで
建築、インテリアデザイン、家具デザイン、庭デザイン、その他暮らしに関わる小物等まで紹介しているウェブサイト。
日本を含め23カ国に配信されています。
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HOUSE VISION 2
雨の中「HOUSE VISION 2」へ行ってきました。
会期終了間際の土曜日、天候が悪いので来場者が少なめかなと思ったのですが・・
お台場・青海駅前 特設会場には、それなりにたくさんの人でした。
映像待ちの長い行列も。
「棚田オフィス」アトリエ・ワン×無印良品
四本柱と薄い板の構成、木だけでない素材使いから農村の景色が広がるようで、私は何だか好きでした。
「吉野杉の家」長谷川豪×Airbnb
タイトな空間。少人数利用時に心地よさそう。
トイレ内、杉皮仕上。
「賃貸空間タワー」藤本壮介×大東建託
棚田オフィス2階からの眺め。外部空間の扱いと、様々なスケール感。
お風呂。
「ライフコア」坂茂×LIXIL
メインテーマではない、屋根裏の家具のようなものが気になって・・
「内と外の間/家具と部屋の間」五十嵐淳・藤森泰司×TOTO・YKK AP
カプセルホテルのようなスケール感で、窓・部屋・家具の不思議な親和性を感じました。内外ともに面白いです。
家具仕上?のクッションを歩く感覚も気持ちよい。
「冷涼珈琲店 – 煎」長谷川豪×AGF
風にそよぐコーヒー豆の麻袋素材の布が、単純なフレームのリズムと相まって爽やか!
個人的には、会場全体のウッドデッキが密かに良かったです。
見た目だけでなく、歩行感が良いし、デッキ端部にある低いフットガードのおかげで、混雑時もみんなデッキの道からはみ出さずにあちこち移動している様が好印象でした。
蔦屋書店の書棚。
ゴツゴツ木が飛び出している感じが、書棚として楽しげで、意外とマッチしています(他の人はどう感じるのかわかりませんが)。
ただ、集成材の表面に突き板を貼るのは・・見た目以外で、何か手間をかける事情があるのかなぁ。
推定樹齢1000年のオリーブ。
テンポラリーな会場に、気の遠くなるような永い時間のコントラストに正直びっくりしました。
しっかり葉が芽吹いているところに、未来への確かな一歩を感じつつ、会場を後にすることができました。
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スミルハン・ラディック展
東京 南青山の「ギャラリー・間」で2016年9月10日まで開催中の
「スミルハン・ラディック展/BESTIARY:寓話集」に行ってきました.
スミルハン・ラディック氏は、1965年 チリ、サンティアゴ生まれの建築家で、近年世界的に注目を集めるような活躍をみせています.
今回の展覧会「寓話集」と題された展示では、
「挿画には、描き手の脳裏をかすめた確信らしきものが必ず現れているように思う」
ということを切り口に、ラディック氏に現れた建築イメージの確信的な瞬間を、主に模型により抽出し見せてくれています.
過去6年間の設計プロジェクトについて、建築家アレハンドロ・リューエル氏が模型に仕立てて見せているという点も、興味深く拝見しました.
プロジェクト模型の中にはテーマの通り、氏のお気に入りの文章の挿画から生まれたものもあるとのことで、設計要請があっての検討モデルでないものも含まれています.
この展示では、建築家主導のイマジネーションや思考(展覧会での「建築プロジェクトに対する確信」という言葉が合うのかもしれません)のようなものが、歴史や技術の上に成り立つ既知の情報と、未知なる知的好奇心のような架空のものを組み合わせて発展させ、建築として提示しているのかも知れません。自分の頭ではほとんど整理出来ませんでしたが、しかし大きなインパクトを受けました.
自分を振り返ってみますと正直なところ、設計に与えられた条件を整理して、ある種の合理性を手掛かりに建築を考える習慣が染み込んでいる現実と、このラディック氏の想像力の豊かさとのギャップに、ハッとさせられるレベルではなく、ショックを受けるほどでした・・
上階の展示室には、ラディック氏が日常持ち歩き記された手帳が数多く吊られていました.
ここでも娘と一緒に学習です(笑)!
しかし、夏休みに親子で駆け足で見る展示のレベルではありませんでした.
スミルハン・ラディック氏の希有なな感性・才能に触れ、到底およばないと素直に感心する一方、こうした手描き素材から人の手でアイデアを探る様子など、自分の設計経験の延長線上で想像できた部分も僅かにはあったため、最後には何だか少しだけホッとしました.
まぁでも、頑張ってみよう!
帰りにはなぜか一人勝手にそう思ってしまった、不思議な世界観を示す素晴らしい展覧会でした.
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小川重雄写真展
建築写真家の小川重雄さん写真展「Hindu Temple in BALI」に
先週の展覧会最終日、家族でお邪魔させていただきました.
東京都台東区根岸にある「GALLERY O」は小川さんの仕事場兼ギャラリーです.
写真展は、神々の棲む島と呼ばれるバリ島の美しい寺院建築をテーマにしたものです.
写真素材は21年前、に小川さんが新建築写真部にお務めの時代にプライベートで撮影されたものとお聞きしました.
「壮大なランドスケープと対峙する姿は、かつて山岳風景写真家を目指していた私の心底を大きく揺さぶるものでした」と小川さんの展覧会テキストにもあります.
写真は、6×9ポジフィルムをスキャニングし、銀塩印画紙に出力された美しいもので、まさに普段私が目にする現代建築とは全く異なる世界観、自然との親和性を力強く感じさせられるものばかりでした.
銀塩プリントの美しさは、生で見るとやはり格別です.
北側窓からのやわらかい自然光と、スポット照明でつくられる展示スペースの光環境.
コンパクトな建築平面の中にも、おおらかな空間と空気感をつくり出しています.
小川さんが直々に写真撮影時のエピソードなど、解説して下さいました.
小川さんお気に入りの吹抜け上部に浮かぶようなテーブルは、普段は写真整理作業を行い、イベント時にはゲストの休憩・談話コーナーにも使用されます.
建築設計は、建築家の庄司寛さんによるものです(写真右、後ろ姿ですが).
当日、庄司さんご本人もいらしてゲストの方へ建築ガイドもして下さっていました.
1階、可動の展示壁の解説をされているところでした.
娘も2階席に、ちょっと座らせていただきました.
1階に、チラリと小川さん.
当時の撮影に、実際使われたカメラを手にする小川さん.
木製フレームのため、季節や湿度によって扱いが変わるとのこと.
冬、動きが緩くなる時には蝋を塗って調整していたそうです.
こうしたエピソードなどを直接お話いただけるのは、大きな展覧会には無い魅力ですね.
「GALLERY O」階段脇の棚にはこのカメラも展示?されています.
右は今回の写真展撮影時に使っていた6×9、左は4×5の使い込まれやカメラ.
第一線でご活躍の現役写真家でありながら、すでにアトリエは小川重雄写真記念館?にもなっていて素晴らしい場所だと思います!
ただ部数限定の写真集が、前日売切れとなってしまったとのこと・・こちらはちょっと残念でした.
今後別の機会があれば早めに伺うようにしたいです.
娘含め家族3人で写真展に伺いましたが、快くご案内下さいましてどうもありがとうございました.
それぞれの視点で勉強させていただきました.
小川さんのWEBページより、展覧会写真を数点見ることができますので、よろしければ下記もご参照下さい.
http://ogawa-studio.com/hindu-temple-in-bali/
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garage
愛知県豊橋市にある、グリーン&インテリアショップ
「garage」に行ってきました.
高校時代の友人、二村昌彦君が代表を務めるお店です.
植物・インテリア雑貨の販売からガーデンエクステリアのコーディネート・施工まで、植物と人の心地良い暮らしを総合的なアイテムを揃えて提案されています.
地域での評判に留まらず、口コミで遠隔地からの来店者も多いと聞きました.
私がうかがったときも駐車場が満車の状態!
※写真はちょうど人が写らないタイミングを狙ったつもりです・・
garageには、2つのスタイルの異なる建物があります.
一つは、こちらの大きな吹抜けを持つ明るい白い空間.
ゆったりと植物・雑貨などさまざまなアイテムを配置しています.
2Fでは、この時期だけのイベント開催中でした.
大きなトップライトから自然光が降り注ぐ、おらかな空間がグリーンと良く合いますね.
もう一つの建物は、少しラフなDIY的な雰囲気.
かつてビニルハウスのパイプ加工場を利用しているそうです.
第二駐車場側からの入口.
こちらも大きな空間、さまざまなアイテムを配置.
仕入れ取引先は100カ所以上からとのこと!
工場で使っていたクレーン鉄骨が空間の真ん中に. 私はこれが好印象.
毎週開催される人気の「クラフト教室」、自分でモノをつくる!というイメージとも合っているよう.
実際店舗のインテリア棚など、セルフビルドでつくられたもの多数.
スチール系の小物もあちこちに.
ガーデニングDIY評判も広がり、雑誌社から依頼を受け出版も.
KIDS ROOM も小さめの倉庫を改装し、用意されています.
外部デッキ含め、二村君のセルフビルドだそうです!
恥ずかしながら、久しぶりの再会だったので、二村君と1枚パチリ.
お仕事中でしたが時間をとってくれて、お互い久し振りにいろいろと話せて良かったです.
将来の店舗構想もこっそり聞いたり・・今後の展開にも期待が膨らみます!
garage のウェブサイトはこちら
http://www.garage-garden.com
地元友人の活躍は誇らしくもあり、多いに刺激をもらった夏のひと時でした.
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虎渓用水広場
岐阜県多治見市 JR多治見駅北側に2016年7月にオープンしています
「虎渓用水広場」を少し見学してきました.
ランドスケープデザインにオンサイト計画設計事務所代表の長谷川さんが関われているとお聞きしていましたので、楽しみに・・
広場の案内サイン
多治見駅と、市役所駅北庁舎との間に位置しています.
せせらぎと共に植栽、土地に高低差など変化を持たせたと思われます全体の修景、人が休憩出来る居場所となる あずまや(屋根)、デッキテラス、ベンチといったそれぞれの仕掛けがさりげなく用意されています.
「虎渓用水」とは
この地でかつて、近世以降の農民の悲願を込めた用水として、村の財産を売り払いながらの難工事を経て明治35年(1902年)に竣工したものだそうです.
しかし現在に至るまでに、農地が住宅に変わるにつれ暗渠化が進んで(目に見えない施設となって)しまいました.
この広場計画では、歴史的施設である虎渓用水を活用し、土岐川の水を広場に導いているそうです.
かつての虎渓用水に思いを馳せたり、広場全体を楽しんだりしていただく場所をつくるというコンセプトですが・・
オープンして間もないと感じさせない程、すでに多くの一般市民に利用されているようでした.
早々に馴染んでいるように見え、素晴らしい計画と運営ですね.
ミストほか、水を使った仕掛けは猛暑の多治見市にピッタリですね.
水際に高い手摺を巡らさないで、こうした公共の場を実現していますが、それ程簡単なことではない気がします.
関わった方々の広場に対する前向きなメッセージを受取るようで、素直にいいなと感じました.
訪れたときもかなりの暑さでしたので、あずまや(屋根)がつくる日影の効果を実感.
屋根のスリット状のトップライトが、木漏れ日のような光を落としています.
ちょっとしたことで、広場を優しい印象にしている気がします.
駅前広場でちょうど、「打ち水大作戦」というイベントを行っていました.
NHKさんも取材されていました.
多治見市が数日前、全国最高の気温39.7度を記録していたため、水打ちで気温が下がることを体験するイベントは、子ども達へのメッセージとしてピッタリのタイミング!
子どもさんから「家でもやってみる!」という声も聞こえました.
ちなみに「デザイン」という言葉は
建築やランドスケープ、プロダクト、グラフィックと様々な場面で耳にします.
しかしながらデザインのお仕事をされる専門家同士の会話でも、同じ単語で定義みたいのものは結構違うなぁ、と思うことがよくあります・・
私なりに・・デザインという行為は、どの分野でも共通して「何か物事を良くしよう、楽しくしよう!」というポジティブな意思・思考がモノに込められること、そうしたモノに人が出会うことが重要なんだろうと思います.
無意識でも他者(創作者)の前向きなメッセージを受け取った時、多くの人が心地よく感じるのではないでしょうか.
素材の選定も、造形的な工夫も、その意思の表れの一部であって、表現が派手でも控え目でも他者が共感する部分が何かあれば、一人でそこに居ても場所・モノからの会話があって居心地が良くなるのではないかなと.
当たり前ですが、形やテクスチャを与えることのみを「デザイン」と言うのではなく、もっと全体の「良きメッセージ」と捉えたい気がしています.
猛暑からか、勢い ちょっと大げさなコメントになってしまいました・・水で頭冷やした方がいいかな.
虎渓用水広場のウェブサイトはこちら.
http://www.kokei-tajimi.info
予約して使用できるイベント広場の料金もリーズナブルな設定に感じます!
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夏の撮影
「犬山の住宅」夏バージョンの撮影/設計:hm+architects
以前開催させていただきましたオープンハウス、お引渡し時には外構・植栽が不十分な状況でありました.
外構(寒冷時期を避けて後に施工した脱色アスファルト舗装や、庭の各植栽)、周囲の景観が緑で落ち着きを見せるこの時期に先日、建築の外観写真を再撮影させていただきました.
この住宅周辺は、特に夏、あたり一面 稲の緑がとても鮮やかです.
秋になれば稲穂が黄金に色づき、稲刈り後はまた大きく景色が変化します.
ちなみにお引越し後、半年弱お住まいのYさんによりますと
景色の変化のほか、水田に水が張られている時期は(他のお宅に比べ)かなり夏の暑さが軽減される実感があるそうです.
建物にかかる夏の光熱費も驚くほど抑えられており、ご満足いただけているようでした.
設計者としましては断熱・通気・内外装等トータルの仕掛けがマッチしているかなと・・周辺環境と相まっての建築の快適さ、とても嬉しい一言でした.
室内からの見え方も期待した通り、鮮やかな稲の緑が広がっていました.
外構アプローチ脇
上の写真は、2月末に植えたイワダレソウのポット苗の様子.
苗の間隔は40〜50cm程度でしたが、約5ヶ月後に・・
しっかりと繁茂し、グランドカバーとしての景観をつくってくれました.
雑草も生えにくく、想定通りお手入れもカンタンでいい感じだそうです.
アクセントとして配置しました、小さなシロヤマブキの苗木にも、すでに花の後の黒い実がついていました. なんだかホッとします.
前回同様、建築写真家の小川重雄さんに撮っていただくことができましたので、写真の仕上がりが待ち遠しいです.
住宅が田んぼに浮かんでいるような外観写真・・納めていただいたのではないかと思います.
国内外の多くの建築写真を撮られた小川さんでも、
「田んぼの中に三脚の足を入れて撮ったのは初めてだよ」
とおっしゃっていました.
撮影ポイントを探して足元の悪いところまで・・恐縮いたします!
写真がまとまり次第、弊社WEBページにUPさせていただく予定です.
※本Blog写真は私のスナップ写真です.
暑い中、撮影にご協力下さいましたYさん、小川さん、どうもありがとうございました.
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加賀 片山津温泉 総湯
昨日紹介させていただきました、山代温泉から近い
こちらも石川県加賀市にあります「加賀片山津温泉 総湯」へ行ってきました.
柴山潟と白山連峰を望む絶好のロケーションに建つこの施設は、1階に温泉施設(公衆浴場)、2階に喫茶「まちカフェ」という構成です.
もちろん設計は、谷口建築設計研究所(建築家:谷口吉生)ということで、温泉利用のほか、建築見学を楽しみにして・・
建築の竣工は2012年、当時の施設名は「加賀片山津温泉 街湯」だったようです.雑誌発表時(新建築2013年10月)でもタイトルはその表記でしたが、
その後「加賀片山津温泉 総湯」に名称変更されています.
地域の温泉文化を継承することからイメージしますと、個人的には後に定めた「総湯」の方が雰囲気があっていいな、と感じます.
外観上、同設計者による「葛西臨海公園展望レストハウス」(1995年 東京都江戸川区葛西臨海公園敷地内)を想起しつつも、施設の左右端部にある自立ガラスのファサード越しに広がる外部テラススペースがこの建築の特徴の一つと言えそうです.
外部階段から直接、この絶景の外部テラスへアクセス可能です.
このテラス席の下部1階には、男女特徴が異なる浴室「潟の湯」と「森の湯」が配置されています.
テラスに2カ所ボックス状に立上がっているのは、下階の洗い場へ自然光を落とすトップライトでした.
ちなみに浴室は日替わりで男女入れ替わり、私が訪れました日は男性が「森の湯」でした(少し残念).
浴室内もシャープな建築外観同様、要素を極力削ぎ落としたミニマルな表現で、設計関係者にとってはリラックスするというより少し緊張感のある空間です.
背筋を伸ばして利用させていただきます・・というような印象でした.
「日本一現代的に洗練された温泉施設」と言えるかもしれません.
でも地元の皆さんは、ごく当たり前の日常のお風呂として利用されていましたので、そこもちょっと面白い雰囲気でした.
場所も近く、ほぼ同時期に建設された山代温泉の古総湯・総湯とのギャップ!
どちらの温泉施設もその個性は素晴らしく、それぞれ日本を代表する建築家の仕事でありますが、建築の多様性、奥深さを感じずにはいられません.
片山津温泉 総湯は43度という高めの温度で、お湯と建築にシビレるような経験をさせていただきました!
2階のカフェへと続く室内の階段・通路(電動ロールスクリーン日除け)
通路部分からも気持ちのよい眺望
柴山潟側のファサード
施設メインプローチ脇スロープを下ると、建物の下をくぐって柴山潟の護岸側へ抜けられます.
柴山潟護岸を活用した、湖畔遊歩道が建物周辺にまで整備されています.
少し離れたところには、桟橋の先にある「浮御堂(うきみどう)」も見えます.
施設利用後、駐車場へ向かうところで振り返って1枚.
護岸の立上がりが小さめの擁壁が威圧的でなく、とてもいい感じだな、と思いつつ・・
すぐ脇にある、スロープが気になりました.
スロープ踊り場だけが高い位置にあり、斜路はどちらからも同じ上り坂?
車椅子利用者には何とも酷な???
あるいは眺望のためのお立ち台???展望にしては高さが低い?
うーん、まさかこんなところで建築「トマソン」じゃあるまいし・・
でも少し落ち着いて考え、
護岸堤・防潮のための水返し機能と
湖畔遊歩道へのスロープアクセス両方を可能にする仕掛けだったのか.
と私なりに理解しました(間違っていたらすみません).
踊り場だけが高いスロープは
おそらく事例として極めて少ない、何とも優しい設計なんだと思います.
ここをはじめ訪れた時は、メインの建築に目が行ってしまいましたが
帰り際には、この水際のデザインが秀逸ですごくいいなぁと感心しました.
建築のメインアプローチとなる長いコンクリート打放し壁を背景に、水平に伸びる護岸堤が非常にマッチしています.
加賀市の公園の一部として整備されたと思われますこの一体の修景については、安全配慮や維持管理、予算、工事区分といった設計手続き上の様々な難しいハードルを超えた結果ようやく実現したものと推察されます.
建築を美しく引き立たせているような、この周辺護岸堤整備へ込められたであろう並々ならぬエネルギーに感服します.
自分の中では、柴山潟の湖畔遊歩道との親和性を感じさせるようなこのスナップ1枚が、帰り際に建築の印象を強く残すこととなりました.
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